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ライター 柿次郎

こんなにもかっこ悪くて泥くさい物語がかつてあっただろうか?弱小企業で日々働くものの、何ひとつ良いことのない毎日を過ごす主人公の田西。女にもまったくモテずに妄想と醜態を振りまきながら生きる。そんな生活の中で、奇跡的にも彼女が出来た田西に待ちうける痛々しい現実の嵐。もう見てらんない!誰か、彼を捕獲して優しくしてあげて!両手におっぱいを掴ませてあげて!

そう、これは平凡なダメ男に訪れる苦難を、リアルな精神描写で残酷に映しだした物語。男女間に起きるであろう“最悪の修羅場”を突きつけて、弱くも儚い主人公のボロ雑巾のような生き様を描く。「負けを認めなければ、負けではない」と悪あがきの果てに主人公・田西が掴んだ幸せとは?かつてない泥くささに溢れた展開と、田西(タニシ)という名前の設定に妙な繋がりを感じてしまいます。泥水のなかで嫌われものと扱われようと、凄まじい繁殖力で存在感をしめすあの巻貝…。

きっと世の大半の男性が自分自身を投影して、田西の生き様を見ていたのでは。それも絶対的な強者に対する、弱者の精神状況。その強さというのを本作では“ケンカ”という暴力で分かりやすく見せつける。大好きな彼女を寝取られた相手が、自分よりも体格が良くてケンカが強かったら貴方はどうしますか。無謀にも暴力で対抗しますか。ワル知恵を働かして復讐しますか。この田西は愚かにも全てを投げ捨ててボクシングに活路を見出して、自分の強さを求めます。全10巻に詰め込んだ、遅れた青春ロードムービーの軌跡。各所で評判になっていたのも頷ける力作です。

しかし、アンチヒロイン役として男心を鋭く刺激する植村ちはるのキャラクターは漫画史上に残るかもしれない。こんなことされたらトラウマになるっつうの。だが、そこが『ボーイズ・オン・ザ・ラン』の一番の見所なんですよね。おー、コワッ!

2008.10.17 Friday | 記事URL | comments(3) | | このエントリーを含むはてなブックマーク
コメント
>こんなにもかっこ悪くて泥くさい物語がかつてあっただろうか?

絶対「宮本から君へ」読んでないだろ
http://www1.odn.ne.jp/kamiya-ta/boysontherun.html
356 | | 2008/10/17 11:05 AM
すいません、全く読んでおりません。
しかも、あの新井英樹の作品とは…。読んでみます。
357 | 柿次郎 | 2008/10/19 8:45 PM
>宮本から君へ
は、絶版でなかなか手に入らないー!!という危機があります。
361 | ライーム | 2008/10/19 11:06 PM

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